伝統的な心理学が根付く中「21世紀の心理学」と呼ばれる「トランスパーソナル心理学」について。
ちょっと難しいのですが、人や環境との関係作りが複雑になった現在の私たちにとって大切なメッセージが含まれていると私は考えているものです。
トランスパーソナル(Transpersonal)とは、
トランス(超える:trans)とパーソナル(個人:personal)が組み合わされたもの。
つまり「自己を超える」という意味です。
自己を超える、とはどんな意味でしょう。
実は私たちは、
心に負担が増えるほど
自分と外部を切り離し、
自己の内へ内へと意識の集中を向かわせていく傾向があります。
ストレスを抱えるほど、
自分の中は
「自分でいっぱい」になるということです。
でもその一方で、自分が存在する意識全体の世界
する意識全体の世界(being)を縮小しているのも事実です。
というのは……
K.ウイルバー(K. Wilber)は著書「意識のスペクトル」の中でこのように説明しています。
私たちの意識世界は4つのレベルの層があります。
1 総合的意識レベル (時間・空間的に境界のない無限の世界)
2 全生物レベル (生き物と環境間に境界が発生)
3 自我レベル (自分の心と身体に境界が発生)
4 ペルソナレベル (ペルソナ(表面上)と影(潜在心・本心)に境界が発生)
1は、
「空(絶対無の世界)」であり、「存在自体」であり、「生命エネルギー」とも上手く表現できない
「何かエネルギーの源」と言われる意識世界のことでこれが私たちの
「本当の自分」、
「命そのもの」だと説明しています。
そして、上記レベルの数字が下降するにつれ、
私たち自分たちの意識世界をその都度二つに切り離し小さく狭くしていくのです。
2では自分と他者・環境を意識の上で切り離し、
周囲(他人や自然)への配慮がなくなります。
3では、自分の心と体を切り離し、その関係を軽視していきます。
4では、自分の心にさえ境界をつけ「表」と「裏」を創りあげるのです。
周囲・世間に向けた
「対外的な私」を心の中にも作り上げる、さも本当の自分のように。
そしてこのレベルの下降に伴い世界を小さく切り離していくその境界の発生が、私たちの「病」、「ストレス」となって私たちを苦しめるのだと言います。
悩んだときは、自分のことしか見えなくのことしか見えなくなってしまうけれど……
思えば、悩み苦しむとき
私たちは自分の内へ内へと入り込み、外のことなど見えなくなっていきます。
対外的に作り上げた自分がすべてになり、
自分の真の存在意味や価値に気がつかなくなります。
もし、各レベルで切り離す境界の存在に気がつくことができれば、
一つひとつ自分を包んでいるより大きな世界を取り戻して人や環境とのつながりを感じることができるのでしょうが、そう易しいことではないのかもしれません。
トランスパーソナル心理学を学んだ以後、
私は自分の足元しか見えなくなったとき、
こんなイメージトレーニングを行うようになりました
自分の体をふわふわと浮かせ、やがて空高く舞い上げます。
視野はその狭い足元から次第に街に変わり、
大地へと広がり、
そして世界地図のような地球を空から見下ろすのです
自分の苦難だけが巨大化
した世界から抜け、
誰もが一生懸命に生きる姿を目で捉え、
自然全体が生命存続のために闘うその光景は
時間・空間世界から抜け出した「命の営み」でしかないのです。
自分が空の一部と
(そのような感覚に)なったとき、改めて自分を苦しめている問題を思い起こすと……なんと小さなことでしょう。
この「命全体の営み」に
どれほどの影響を持つというのでしょうか。
人は、人の中で生き、
人間は環境と共に存在します。
「命はつながっている」、そんなことをじわ〜っと感じると「まぁ、いいか」とと気持ちが少し楽になるのです。
トランスパーソナル心理学は一見難しいように見えますが、
何か悩み苦しんだとき、
心で一度イメージトレーニングを試してみてください
人は一人で生きているのではなく、すべての命とつながっているのです。
悩んだときは頑張っている自分をきちんと認めてあげて、そして周囲の存在に気づいてください。
環境はあなたのために生き一方であなたは周囲のために生きている。
私たちは皆「命のつながり」をもって存在する生き物なのですから。
参考
心理カウンセラー
吉野美恵(よしのみえ)